産婦人科の受診をすると、大抵の場合「内診」という診察があります。
「内診」とは医師や助産師が、受診者の膣の中に指を入れて診る診察のことで、
下図のような内診台という診察台に乗り、股を広げて受ける診察です。
主に指を1~2本(必要時には3本以上)膣に挿入し、診察を行います。
そのため初めての方や、慣れない方も大勢いらっしゃいますし、
診察をする際に抵抗を感じる方も多くいらっしゃいます。
それは、そうですよね。
自分の大事な場所を、
医療者とは言え他の人に見せるのはとても苦痛なことです。
そのような苦痛を強いられる検査だからこそ、
何を診ているのか?それによって何が分かるのか?
を具体的に知っておくことがとても大切です。
それが分れば苦痛に感じた内診も意味のあるものと自覚でき、
ポジティブな気持ちで受けることができるかもしれません。
また、医師や助産師にも質問がしやすくなります。
今回は、妊娠、出産、産後で行う
「内診」についてそれぞれ説明していきます。
妊娠中に行う内診
妊娠中に行う内診は、
主に切迫早産になっていないかを調べていきます。
内診により子宮の入り口の硬さ、開き方、赤ちゃんの頭の下り方等を診ます。
出産間近の場合は、出産の兆候はあるかを診ます。
予定日超過を過ぎる場合は、
子宮の入り口(子宮口)の中に指を入れ刺激し、子宮口を開き、
赤ちゃんを包んでいる膜と、それに張り付いている子宮の壁を剥がす
「卵膜剥離」という処置をする場合があります。
これにより陣痛発来を促し子宮口開大を期待できます。
俗称で「グリグリ」ともいわれています。
出産していい時期になっているにも関わらず、
「内診が痛い」と感じた場合は、
まだ体が出産の準備ができていないという目安にもなります。
分娩・出産時に行う内診
分娩・出産時には内診により分娩の進行具合を診ます。
子宮口の柔らかさ、向きや位置、開き方、赤ちゃんの頭の位置等を確認し、
分娩がどれぐらい進行しているかを診ていきます。
また、赤ちゃんの頭の骨(骨重責、大泉門や小泉門等)を触り、
赤ちゃんがどのように回旋して生まれてきているかを診ます。
赤ちゃんが産道を回って下りてくる回旋を診る事は大変重要で、
違う回旋をしていたり、赤ちゃんの頭の進入の角度が違うと
分娩が滞ってしまう原因になります。
もっと詳しく知りたい方は以下もご覧ください。
【赤ちゃんはどうやって産まれてくるの?】
【なぜ赤ちゃんの頭は「丸くないの?」「デコボコしているの?」「へこみがあるの?」】
その他にも、
赤ちゃんを包んでいる羊膜と羊水の状態、膣の形や硬さ、
産道に面する骨盤の形等も把握して、
トータル的にお産全体の流れを把握していきます。
出産直後・産後に行う内診
出産により子宮口や膣といった産道に傷は付いていないか、
出血はないか、出血が溜まっていないか等を診ていきます。
また出産後、子宮が元の大きさにに戻ろうとしているか
(子宮復古ができているか)等を診ます。
出産直後、入院中、1ヶ月検診でこれらを診ていきます。
内診台の上で行う、内診以外の診察
内診台では指で診る内診の他にも
経膣、経腹でみる超音波診察(Bスコープ)と、
膣の中に特殊な器材挿入をして、膣を広げて観察する
クスコ診があります。(下図参照)
超音波では「内診」では分らない深部の状況をみることができます。
クスコ診では膣を広げ観察できるため、
目で膣や子宮の入り口などの状況を観察することができます。
内診台で行う診察時の痛みを防ぐ方法
内診台に乗る診察はナイーブな診察になるため
医療者側もなるべく苦痛を与えず、
短時間で済ませる事を心がけています。
しかし、緊張のあまりに「内診や診察をこわい」と感じてしまうと
必要以上に痛みを生じる場合があります。
膣に力が入るとどうしても痛くなってしまうからです。
内診台に乗る際はまずゆっくり深呼吸することが大事です。
また、指や器具や超音波のプローベを挿入する際は、
口を大きく開けながら息をしていきましょう。
さらに目を大きく開けるのも効果的です。
そしてなるべく股、特に股関節に力が入らないのを意識しましょう。
それでも、診察を受けている間に痛み等があれば
必ずその場で医療者に伝えてください。
その痛みの訴えも大事な診断の基準になります。
さいごに
内診で診察している事がなんとなくお分かり頂けたでしょうか?
受診する方は勇気がいったり、最初は苦痛に思うかもしれない診察ですが、
どの診察も、産婦人科の診察には欠かせない大事な診察になります。
自分の体のことは自分では知る権利があります。
診察中「今どういうことをされいるのか」が分かると、
不安の軽減に繋がり、質問もしやすくなると思います。
自分の体に起きていることに疑問を持ち、質問し、それを理解する姿勢は、
自主的にお産に臨む為にもとても大事なことです。
妊娠期間中から、分からない事があれば
どんどん質問していける癖をつけることをオススメします。