はじめに
出産は決して楽なものではありません。全てのお母さんが命をかけて我が子を産むのが「出産」です。そして、お腹の中の赤ちゃんも小さい体で陣痛に耐え、狭い産道を通り抜けて産まれて来ます。赤ちゃんも命をかけて、この世に誕生しようと頑張るのです。出産は、お母さんと赤ちゃんが協力し合うことで成し遂げられる、命がけの出来事です。 このダイナミックな出産の過程を、赤ちゃんの目線に立ち、お腹の中の赤ちゃんはどうやって産まれてくるのかを簡単に説明していきましょう。
赤ちゃんが産まれてくる過程
陣痛が来る前
赤ちゃんは妊娠後期になると、頭を下にして産まれる準備をしていきます。(詳しくは『なぜお腹の赤ちゃんは「頭が下」で「背中が左側」にあるの?』へ)そして、前駆陣痛(本陣痛が起きる前の予兆の陣痛)の時から赤ちゃんは体を少しずつ丸めていきます。体を丸めると、産道を通りやすくなることを赤ちゃんは知っているからです。
陣痛が来た時
赤ちゃんはお母さんに陣痛がくると、丸くなった体をさらに丸めていきます。顎は胸につけ、膝も胸につくぐらい丸くなるのです。そして、陣痛を使って、後頭部から子宮の入り口(子宮口)の方へ入り込みます。お母さんの横側にあった赤ちゃんの背中は、お母さんのお臍の方へ少しずつ移動させます。(お母さんに対してうつ伏せの状態)以上のように、赤ちゃんは体を出来るだけ丸めて小さくしてから、狭い産道にねじ込むようにして降りてこようとします。このねじ込む運動を回旋といいます。
陣痛が強くなって来た時
お母さんの陣痛が強くなってくると、赤ちゃんは後頭部を先頭にして、どんどんと産道をおりてきます。強い陣痛がないと赤ちゃんは狭い産道を通れません。産道は暗くて、狭く、長いトンネルのようなもです。その中を赤ちゃんは自分の頭でぐりぐりこじ開けるように前進するのです。
この時の強い陣痛は、赤ちゃんの体を後押しして、さらに下の方へ前進させる力になります。しかし、お母さんが陣痛を怖がり、全身に力が入りすぎてしまうと、狭い産道がさらに狭くなり、赤ちゃんは進みたくても前に進めない状況がうまれます。また、お母さんの呼吸が上手にできていないと、赤ちゃんは酸欠にもなります。そうなると、「暗いし、苦しいし、痛いし」と3重の苦しみを味わうことになるのです。
お母さんは、陣痛の時も息をしっかり吐いて、全身の無駄な力を抜き、新鮮な酸素を赤ちゃんに送り続けなければなりません。(詳しくは『簡単ソフロロジー法「呼吸法編」』へ)そうすると、狭い産道が緩み、赤ちゃんは苦しむことなく下へ降りやすくなります。
陣痛がおさまったら少し後退し、陣痛がきたら前よりも進みます。まるで「3歩進んで2歩下がる」ように、産道の組織を傷つけないように少しずつ頭でゆっくり押しひろげながら降りてきます。こうして、硬く閉ざされた子宮口をねじ開けながら産道を降りてくるのです。
子宮の入り口が全部開いたら(子宮口全開大)
子宮口が全開大になるといよいよ外の世界が近くなります。後頭部をさらに前進させていきますが、赤ちゃんは狭い産道を通るため頭の形を変形させながら進みます。
(詳しくは【なぜ赤ちゃんの頭は「丸くないの?」「デコボコしているの?」「へこみがあるの?」】へ)
出口付近に差し掛かっても、お母さんの会陰部の皮膚やその周辺の皮膚を傷つけないように、ゆっくり皮膚を伸ばしながら赤ちゃんは頭を出していきます。陣痛が来ると、お母さんの足の間から頭が見えるようになっていき、陣痛が落ち着いた見えなくなります(排臨)。それを繰り返すうちに、陣痛ら落ち着いたときも、常に頭が見えた状態になります(発露)。そして、お母さんに対しうつ伏せになりながら少しずつ頭を出していきます。
赤ちゃんの頭が出たら
頭が出たら、赤ちゃんは自然と体全体を真横に向けます。これは、自分の肩を出す際、お母さんの陰唇に沿う方が出やすいのを知っているからです。肩が出たあとは、今度はさらに体をねじり、お母さんの方を見ようとします。そうして、最後におしりと足を出していきます。
赤ちゃんはお母さんの顔を一番最初に見るために、最後頭が出たら、体を180度回転させて産まれてくるのです。
まとめ
イメージはできましたか?これらの回旋と言われる過程は、お母さんの骨盤を通るために必要な運動で、緻密に考えられたものです。それを、お腹の赤ちゃんが本能で知っているなんてとてもすごいことですよね。
また赤ちゃんは、頭の骨を動かしたり(骨重積)それに伴い頭にコブも作ったりしながら誕生します。本当に大変な思いをしてお母さんに会いにきてくれるのです。
さいごに
「出産」はお母さんだけではなく、小さい小さい赤ちゃんも、一生懸命頑張って産まれてこようとしています。お母さん、お産は1人ではありません。赤ちゃんと一緒に乗り越えるものです。出産を終えたら、自分も赤ちゃんもめいいっぱい褒めてあげましょう!是非「自分の産む力」と「赤ちゃんの産まれてくる力」を信じ、お産に臨んでくださいね。