【助産師監修】陣痛はこわくない!陣痛のメカニズムとは

楽しい出産

『陣痛』 と聞くと…
「こわい」「ツライ」「キツイ」などの
マイナスのイメージが先に立ってしまう方も多いのではないでしょうか。

それは、圧倒的に「陣痛=痛くてツライ」という先入観を
無意識に植え付けられているからです。
周りのツライ陣痛を経験した方からの意見だったり
メディア(ドラマ等)の過剰演出だったり。

でも実際の陣痛は必ずしも
「痛くてツライ」だけではありません。

実際には…

陣痛の痛みは思ったより全然楽だった
出産は最高に気持ちよかった
何回でも産みたい!

という声を現場ではよく聞きます。

これは本来の陣痛の力を十分に引き出し
「良い陣痛」を
自分の意思でコントロールできたからです。

逆に言えば
陣痛の中でも「悪い陣痛」というのも存在します。
この陣痛は痛みも強く、そして辛く感じてしまうのです。
そしてこの陣痛もまたお母さん次第で導いてしまうのです。

陣痛のメカニズムを知ることで
「陣痛=こわい・ツライ・キツイ」ではなく
「陣痛=乗り越えられる嬉しい痛み」
というような考え方に
シフトしていきましょう。

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簡単解説『陣痛のメカニズム』

陣痛を引き起こす「オキシトシン」


陣痛は「オキシトシン」というホルモンによって起こります。

この「オキシトシン」というホルモンは、
別名「愛情ホルモン」「幸福ホルモン」とも呼ばれ、
愛おしい人と触れ合ったときや幸せに感じた瞬間などにも
たくさん放出されるホルモンです。
また、母乳を生成するための大切なホルモンでもあります。

この「オキシトシン」が陣痛時に大量に放出されます。
放出されると、陣痛の波がやってきます。

 陣痛は波のようにだんだん強くなり、
ピークに達すると弱くなっていきます。


「オキシトシン」が引き起こす陣痛は
幸福感や愛情に包まれるため
痛みが強くなってきても
「お腹の赤ちゃんに会える大事な痛み」と
プラスに捉えることができます。
陣痛の痛みはカラダに悪さをしている痛みではないからです。

愛情幸福ホルモンである「オキシトシン」が
陣痛を引き起こす役目を担うことにより、
お母さんは陣痛の痛みをツライものではなく
大事な痛みであるとプラスに受け入れることができます。
そして、
出産後から我が子を心から愛おしいと思うのです。


逆にオキシトシンが陣痛に関与していなければどうでしょうか。

母親は出産が終わると
この痛みを与えたのは産まれてきた赤ちゃんだと感じ、
愛情がわかず
出産後から暴力的になってしまうといわれてしまします。
母親のそのような行為は大変危険です。

「オキシトシン」というホルモンは
陣痛を乗り越える力を与えてくれるだけではなく
出産後からスムーズに育児に繋がるよう、
産まれてきた赤ちゃんに惜しみない愛情を注ぐことができるのです。


間欠期に痛みを取り除く「βエンドルフィン」


そして陣痛と陣痛の間には、
必ず痛みが遠のく休憩の時間(間欠期)があります。

そのときに分泌されるホルモンが「βエンドルフィン」です。

この「βエンドルフィン」は
別名「脳内麻薬ホルモン」とも呼ばれています。

例えば、
満腹でデザートを目にしたとき、「食べたい!」
と思ってしまうことありませんか?
特に女性に多い ″別腹″も「βエンドルフィン」の働きです。
満腹である脳を錯覚させ、胃の消化を亢進させます。
そして、もう一度食べれる状況に持っていきます。

自分で脳をだますことができるホルモンなのです。


この「βエンドルフィン」が
陣痛が遠のくのと同時に大量に分泌されます。
そうすると、先ほどまでの陣痛の痛みを瞬時に取り除いてくれるのです。
その効果は、強い鎮痛剤の代名詞であるモルヒネの5倍以上とも言われます。

また「βエンドルフィン」も幸福感を与えてくれます。
そのため、陣痛と陣痛の合間の短い時間でも
しっかり身体と気持ちを休めることができます。
陣痛が強ければ強いほど
間欠期の「βエンドルフィン」の分泌は多くなりなります。

そのため分娩間近で間欠期が1~2分程の短い時間でも
深い眠りに入ることができるのです。

そのような経験をされた方も多いのではないでしょうか。

『良い陣痛』と『悪い陣痛』


「オキシトシン」と「βエンドルフィン」
が効果的に出る陣痛は『良い陣痛』といえるでしょう。

『良い陣痛』は
「オキシトシン」の効果で、陣痛時にパニックを起すことなく
落ち着いて赤ちゃんのためにしっかり呼吸ができます。
陣痛が遠のくと「βエンドルフィン」の効果で
心と体を十分に休ませることができ
次の陣痛に向けての準備ができます。

この2つのホルモンの働きで
赤ちゃんを産み出すための『効果的な陣痛』となります。
そしてこの緩急がある陣痛こそが
出産をより安産に楽に導く陣痛になるのです。


しかし『悪い陣痛』も存在します。
『効果的ではない陣痛』のことです。

この陣痛は「アドレナリン」というホルモンが
多く分泌されて引き起こされます。
「アドレナリン」が優位に立つと痛みを過剰に感じ、
攻撃的になったりパニック発作を引き起こします。

つまり、
陣痛の痛みがあるのに ″ただ痛いだけ″ で
赤ちゃんを娩出する力になっていない陣痛なのです。
心身ともに穏やかになれず、
陣痛が去った間欠期にも 痛みが持続し、
ずっと陣痛が続いているように感じてしまいます。

『良い陣痛』と『悪い陣痛』が起こる原因


なぜ『良い陣痛』と『悪い陣痛』が存在するのでしょうか。

それはお産に挑む母親の状態が関係しています。

『良い陣痛』は
お産に対し「自信・安心・希望」といったポジティブな感情を持つ
お母さんが引き起こすことができます。
この心理状態が「オキシトシン」と「βエンドルフィン」の
分泌を促進し血中濃度を高めることにつながります。

一方、『悪いお産』は
お産に対し「不安・恐怖・羞恥」といったネガティブな感情を持つ
お母さんが「アドレナリン」を大量に放出し
本来お産に必要な「オキシトシン」や「βエンドルフィン」の血中濃度を下げ、効果的な陣痛が得られにくくなった状態です。

たったそれだけ?
と思う方もいらっしゃるかもしれませんが
ソフロロジー式分娩法の回でも説明したように
妊娠期からの出産に対するイメージや心構えが
多いに出産に影響があるのは事実なのです。

*詳しくは、【ソフロロジー式分娩法って何がいいの?】


いっぱいお産のことについて勉強しているお母さんでも、
こわい情報だけが頭に残り
「不安や恐怖」で頭でっかちさんになっている方は
難産になりやすい傾向があります。

逆に、お産に対する勉強は全くしていなくても、
「なんとかなる」「赤ちゃんに会えるために頑張るだけ」と
自分に「自信」を持っているお母さんの方が
安産だったりすることが多く見受けられます。
それもホルモンの影響が多く関係している結果でしょう。

 妊娠期からのお産に対するプラスのイメージをしっかりもち、
前向きな気持ちで挑めることが『良い陣痛・お産』につながるのです。

*妊娠期に行える効果的なイメージ方法は
簡単ソフロロジー法:イメージトレーニング編】で紹介しています。


おわりに

妊娠すると「陣痛」に対する恐怖心が募り
赤ちゃんに会えることよりも
出産に対する不安な気持ちの方が大きいままに
過ごしてしまう方がいらっしゃいます。

それはとても残念なことです。

妊娠期間中は
人生の中でもほんのわずかな時間の
女性に限られた
とても神秘的で幸せな時間でもあるからです。


しかし、出産が不安であるのは誰もが思うことでしょう。

陣痛の痛みや、痛みの感じ方も十人十色なので
痛みに弱いと最初から思っている方は
不安や恐怖がどうしても先行してしまうのも当たり前です。

私は、出産後に穏やかに赤ちゃんを迎えるためなら
無痛分娩を活用するのも多いに賛成です。

出産はどんな方法であれ楽なものは一つもありません。
お母さんは命がけで我が子を産むことには違いありません。

しかし、
決して「お産=こわい」ものと決めつけないでください。
それよりも我が子に会える「楽しみの気持ち」をどんどん育てて
笑顔で我が子に会えるお産を迎えて頂きたいと思います。

お産を楽に乗り越えるコツを以下のリンクでも紹介しています。
「妊娠・出産・育児」が「楽に」なる鍵は『夫婦力』にあり!【前編】
「妊娠・出産・育児」が「楽に」なる鍵は『夫婦力』にあり!【後編】