【助産師監修】なぜ赤ちゃんの頭の形は「いびつ」「ぼこぼこ」?

【助産師監修】なぜ赤ちゃんの頭の形は「いびつ」「ぼこぼこ」?

赤ちゃんの頭を見た時、
赤ちゃんの頭の形が「丸くない」「いびつだ」
と感じたことはありませんか?
後頭部が長かったり
頭頂部が長かったり
左右の形が違ったり。

また、赤ちゃんの頭を触ると
デコボコしていたり
へこみがあることに
気付いた方も多いのではないでしょうか。

これらは、赤ちゃんの頭蓋骨に特有な現象です。

赤ちゃんの頭蓋骨は柔らかく、
何枚かの骨に分かれており結合せず脳を覆っています。

その理由もふまえて、
今回は赤ちゃんの頭の特徴とその原因について説明します。

赤ちゃんの頭が「丸くない」「変形している」理由

出産時に頭の形を変えながら産まれてくる

出産時赤ちゃんは狭い産道を通ってきます。
その産道を通るため、
赤ちゃんの頭蓋骨は移動し重なり、
頭全体を小さくしてその産道を通ってきます。(応形機能)


産道を先進する頭の部分によって、頭の形が変わってきます。
一番多くみられるのは、後頭部が長くなっている赤ちゃんです。
これはこの赤ちゃんが産道を通る際、
後頭部を前進させて産道を通ってきたことを示しています。

この変形は1ヶ月ほどで自然になくなります

出産後の向き癖による外部の圧力

出産して間もない赤ちゃんは、
お腹の中の体勢が癖になっているため向き癖があります。

特に新生児は
頭をまっすぐにして寝かせても
自然に左右のどちらかに向いてしまうのです。

また、上向きがずっと好きな赤ちゃんもいます。
このまま赤ちゃんの好きな向きの状態で寝かせていると、
柔らかい赤ちゃんの頭は、
下になっている部分が平坦になっていきます。


その状態で骨が固くなってしまうと、
大きくなっても、頭の形が歪んだままになってしまいます。

以下の方法を図ることで生後2~3か月までに
少しずつ改善がみられていきます。

【頭の歪みを防止・改善する方法】
○ 頭の向きを2時間毎に変えてあげる
○ 向かせたい方向に体全体をむけ、
  反対を向けないように背中にバスタオルなどで土手を作る
○ 赤ちゃんの頭にドーナツ枕をいれて、頭への圧を分散する


※詳しくはこちら
赤ちゃんの頭の形を「丸くする」方法


頭蓋骨癒合早期癒合症の可能性も

赤ちゃんの頭の歪みがだんだんとひどくなる場合は
頭蓋骨癒合早期癒合症という疾患の可能性もあります。


向き癖の改善を図っているのにも関わらず
生後2~3か月になってもどんどん頭の歪みがひどくなる場合は、
かかりつけの小児科に相談してみましょう。

場合によっては頭蓋骨の形を整える
頭蓋形状矯正のヘルメット療法などを行います。

赤ちゃんの頭がデコボコしている理由

骨重積

赤ちゃんの頭がデコボコして、骨が盛り上がっている部分は
骨重積が起きている部分になります。


これは赤ちゃんが狭い産道を通る際、
頭を小さくし、形を変える時に起こります。
離れていた頭蓋骨が移動し、
骨が重なった部分が骨重積の部分です。

経腟分娩ではなくても、
妊娠後期になると出産の準備のために、
赤ちゃんは自分の頭を子宮の入り口付近に位置しはじめ、
グリグリと少しづつ侵入しようとします。
そうして少しずつ骨重積を始めます。
そのため、帝王切開後の赤ちゃんでも骨重積が見られることがあります。
逆に、逆子の赤ちゃんは骨重積が目立ちません。

骨重積は痛い

お母さんは大変な思いをして赤ちゃんを出産しますよね。
出産時のお母さんの体は、骨盤の骨が動きます。
恥骨や尾骨といった骨盤全体が開き、
赤ちゃんを通すため産道を広くするのです。

「骨が動く」という現象は、
骨折に値するほどの痛みを生じるといわれています。
そのため、出産時に腰やお腹が砕けるように痛いという方がいるのは
本当にそのような痛みを感じているから、ということになります。

一方お腹の中の赤ちゃんは、
出産時、頭の骨を動かしながら産道を通ります。
頭とは全身をつかさどる大事な臓器です。
それを守る頭蓋骨が動くとなると、その痛みは尋常なものではありません。
しかし、その痛みを小さい体で耐えて、
この世に必死に産まれてこようとするのです。

出産時は、お母さんだけではなく
赤ちゃんも一緒に頑張っているのだということが分りますね。

※詳しくはこちら
赤ちゃんはどうやって産まれてくるの?】へ

骨重積自体は生後1ヶ月ほどで消失します。
頭の形が丸く戻っていくと同時になくります。
しかし、骨のつなぎ目は1歳近くまで触ることができます。
ボコボコではなく、少し段差がある?ぐらいになっていきます。

赤ちゃんの頭にへこみがある理由

大泉門・小泉門

赤ちゃんの頭蓋骨は何枚かに分かれています。
その骨と骨に囲まれた隙間のことを泉門といいます。
この泉門の隙間のおかげで骨重積が行われ、
応形機能の際にも圧が分散ができるようになっています。

その中でも手で触って分るのが大泉門と小泉門です。
骨がない部分なので少しへこんでおり、触るととても柔らかいです。
大事な部分なので触りすぎるのは控えてくださいね。

大泉門は前頭部、小泉門は頭頂部の後部に存在します。
大泉門は12ヶ月~18ヶ月頃、小泉門は2~3か月頃で閉じます。


大泉門が異常にへこんでいたり、膨張していたりすると
脱水や感染症などの疾患を抱えている可能性がありますので
かかりつけの小児科に相談してください。

さいごに

赤ちゃんの頭には、
産道を通るためのとても大切な機能があります。

さらに、私達助産師や医師は、
この赤ちゃんの頭の骨の形を頼りに内診をしています。
赤ちゃんの頭を触ることで
分娩時の赤ちゃんの位置や回旋の仕方、
お産の流れの予想を立てることができます。

※詳しくはこちら
産婦人科の診察『内診』で何を診てるの?何が分かるの?


いろいろな役割を果たす赤ちゃんの頭は
小さくてもとても立派なのです。

すごい思いをしてこの世に誕生してくれる赤ちゃん、
頭の形をみるとまた愛おしく感じませんか?