【助産師監修】夫が出産にできること。産痛緩和マッサージ

楽しい出産

陣痛時のお母さんは
全身に神経が張り巡らされており、
周りの刺激に過敏になります。
そのため、陣痛は痛いけど、
「どこをどうすればいいか」本人も分らず、
周りの家族に指示するのが難しい場合があります。
また、過敏になっているせいで
周りのご家族に余裕をもって話しができないこともあります。
ご主人や家族に当たってしまうこともよくみられます。

私たち助産師は分娩進行に合わせて、
その方にあった産痛の緩和法やマッサージをしています。
これは、知識や経験によって培われたものです。
ですが、助産師がずっとついてあげれることはできません。

そのため、自宅で、前駆陣痛が起きたときや
陣痛の初期の時、陣痛で入院しても助産師がその場にいない時などは
ご自身やそのご家族で対処することになります。
詳しくは
『立会い出産(分娩)』の時、夫は何をすればいいの?夫の役割と心構え】へ

陣痛をの「楽に」乗り越えるには
イメージトレーニングや呼吸法が大前提ですが、
これを理解した上で
今回ご紹介する産痛緩和方法と産痛マッサージを行うと
より効果を実感できます。
*詳しくは以下へ
簡単ソフロロジー法【イメージトレーニング編】
簡単ソフロロジー法【呼吸法編】

「産痛緩和法」と「産痛マッサージ」

分娩進行や陣痛の強さに合わせて行う「陣痛が和らぐ」方法を説明します。


陣痛が弱い時(前駆陣痛、陣痛初期、微弱陣痛など)

生理痛と同じで、お腹や腰を温めると楽になります。
温かい手や湯たんぽで、痛い部分の腹部や腰部を
温めたり、さするとよいでしょう。
特に座禅の姿勢を勧めていいます。
座禅の姿勢はお産を促進させる姿勢であり、
呼吸が深く行えることで、お腹の赤ちゃんも楽になる姿勢です。

ご主人がいるときは、
奥さんには座禅を組んでもらい、
旦那さんが後ろから腕を回す感じで
痛みを感じる腹部に、温かくて大きな手を添えてもらいましょう。
腰部が痛い際も、温かい手のひらをしっかり患部に密着させ
温めながらさすってあげるとよいでしょう。

痛みがあるときはゆっくりとした呼吸を行っていきます。
「ゆっくり鼻から息を吸い、口から細く長く吐きます」
痛みがある間はこれを数回続けます。

夜中は起き上がらなくても大丈夫です。
横になりながら行ってください。
少しでも体力を温存させます。

腹部や腰部を温める方法として重宝するのが湯たんぽです。
最近ではお湯を入れるものではなく、
レンジでチンするタイプの湯たんぽが産院でも使われるようになってきました。
簡単に使用することができるので、
欲しい時にすぐ準備することができます。
また従来の湯たんぽより温かさが持続し、
お湯漏れによる焼けどの心配もありません。
また冬場の赤ちゃんの体温調整にも役立ちます。

逆に、貼るカイロや普通のカイロは
低温やけどをしやすいためおすすめしません。

陣痛開始〜子宮口5cmまで(所要時間:初産婦8時間 / 経産婦4時間)

強い生理痛の様な腰痛
強い生理痛の様な上腹痛、下腹痛
下痢のような腹痛

患部を温める方法と併用して
以下の部分をマッサージします。
マッサージ方法は下記に説明しています。

① ウエストのくびれた部分(腎盂)

子宮口5cm~8cmまで(所要時間:初産婦4時間 / 経産婦2時間)

強くて激しい腰痛
強くて激しい下腹部

患部を温める方法と併用して
以下の部分をマッサージします。
マッサージ方法は下記に説明しています。

② 腰と仙骨の間

子宮口8cm~全開大(10cm)まで(所要時間:初産婦2時間 / 経産婦1時間)


激しくて砕けそうなほどの腰痛
激しい下腹痛
激しい肛門痛

患部を温める方法と併用して
以下の部分をマッサージします。
マッサージ方法は下記に説明しています。

③ 仙骨部 ④ 肛門部

①~④のマッサージ方法

上記①~④のマッサージ法は
主に本人以外の方がマッサージする部位になります。

出産直前になると、お母さんの背中には脂肪がつき、
背骨の位置が確認しにくくなります。
そのため、出産前から位置を確認しておくことをおすすめします。
そうすることで、陣痛が発来しても
的確な位置でマッサージをすることができるだけではなく、
お母さんの方もマッサージに対しより指示を出しやすくなります。

①~③の場合
陣痛がくると
1)お母さんは息をゆっくりはきます。
  その際介助者はそのツボの部分を押し続けます。
2)指圧する時はツボに対しまっすぐ力をかけましょう。
3)お母さんが息を吸う時に、ツボから指を離します。

指圧する際は、腕や手の力だけで押そうとはせず、
身体全体で圧迫するつもりで行って下さい。
そうしないとすぐ腕や指を痛めてしまいます。

④肛門痛の場合
私たち助産師は手のひらの母指球(親指下の盛り上がってる部分)などで、
強く肛門を圧迫します。
最初は難しいので、
ゴルフボールや硬いテニスボールを肛門に当てて圧迫することを
おすすめしています。
手も傷めず強い力を入れやすいからです。
この時も圧迫する際は、
陣痛が来てる最中にお母さんが息を吐いている時だけにします。

上記で示した写真からも分るように
分娩進行により赤ちゃんの頭が下りてくるに従って、
痛みの部位と強さが変わってきます。
そのため
①➡②➡③と部分的に押さえると言うよりは
①~③に徐々にマッサージの部分が変わってくると思ってください。
マッサージの位置が違うと感じたら、
施術を受けているお母さんはすぐ介助者に伝えて下さい。

その他

また陣痛が来ているにも関わらず
足が冷えている場合は、
陣痛が滞り、痛みも強くなりやすいです。
(詳しくは【陣痛がこない!陣痛が起こらない3つの原因とは?】へ)
足首が冷えないようにくるぶし以上の靴下をはくか、
靴下が嫌だったら、足先が出るレッグウォーマーを履きましょう。

まとめ

陣痛は誰かが側にいてマッサージをしてもらえると
心も体も「楽に」なります。
立会い分娩を希望されている方は、
出産の時期が近づいてきたらこの情報を夫婦で共有して、
ご主人がマッサージできるようにしておきましょう。
他のご家族でも効果はありますが、
普段スキンシップの多いご主人に触れてもらうことによって
より、産痛緩和と陣痛促進を期待することができるのです。
*詳しくは
「妊娠・出産・育児」が「楽に」なる鍵は『夫婦力』にあり!
【前編】
【後編】

お産をひとりで迎える方は、
周りのスタッフの力を多いに頼ってください。
不安なこと、痛くてマッサージして欲しいこと、
側にいて欲しいことなどは溜め込まず言いましょう。
そして少しでも「楽に」お産をの乗り越えることが出来るように
自分と赤ちゃんの力を信じ、
赤ちゃんに会えるのを楽しみにお産に挑みましょう。