【助産師監修】立会い出産の夫の役割と心構え

【助産師監修】立会い出産の夫の役割と心構え

今日の産科の現場では『立会い出産』『立会い分娩』
(以下『立会い』と表記)
が多くみられるようになってきました。
『立会い』ができる施設も増えて、それを希望するご夫婦も増えてきています。

しかし、いざお産になると
『立会い』としたものの自分は何をすればいいのか分らず、
困惑するご主人がいらっしゃるのも現実です。
その結果、「見学分娩」になっている残念なご主人もいます。

お産中の奥さんは、陣痛に長時間向き合っているため、
余裕もなく、ご主人にうまく指示が出せません。
しかし、指示待ちをする夫の態度をみるとイライラしてしまい、
お産中に怒りをぶつける奥さんもいらっしゃいます。

こうならないためにも…
人生のうちで僅かしかない我が子の誕生の瞬間を
夫婦で共有するために
出産前に『立会い』についてしっかりご夫婦で話し合ってみましょう。

なぜ『立会い』をするのか?

まずは、なぜ『立会い』をするのか、必要なのか、を
夫婦ふたりでしっかり話し合う機会を作りましょう。
夫婦そろって我が子の出産を迎えるのは、
メリットも多くありますが、
事前の話し合いをしっかりしておらず、
『立会い』を後悔してしまう夫婦も少なからずいます。

周りの人がしてるからなんとなく
(妻または夫に)頼まれたから仕方なく
あまり気のりはしないけど断ったらいけない感じになっているから
など…

もし、夫婦どちらかが上記のような考えで
『立会い』をしてしまうと、
後悔することになるかもしれません。
夫婦ふたりの価値観が違って当たり前です。
相手から予期せぬ返事が返ってきたとしても、
お互いの意見を尊重し納得した
「ふたりの答え」を出してください。

もし『立会い』を選択したのであれば
夫婦ふたりにとって、
『立会い』をしてよかった!
と心から言える出産になるように、
「お産のときに何をすればいいか」以下を参照されて下さい。

『立会い出産(分娩)』の本来の意味

『立会い』とは
先ほども述べましたが「見学」ではありません。
奥さんとお腹の子どもが陣痛を乗る越えるのを、側で支え、
家族一丸となって出産に臨むのが本来の『立会い』の姿です。

しかし、陣痛は
初産婦さんでは半日、経産婦さんでも6~8時間かかるのが当たり前です。
ご主人が仕事でずっとついてあげれない状況も多いにあり得ます。

だからこそ、
夫婦で『立会い』についてしっかり話して頂きたいのです。
ご主人が奥さんの側にいつからいるのか、
奥さんはいつからご主人に側にいて欲しいのか、
そのタイミングは大きく以下のような場面になります。

入院したらずっと側にいる
陣痛が本格的になってきてから側にいる
出産が近づいてきたら側にいる
出産のときだけ側にいる

『立会い』といっても
どの夫婦にも個性があるように
『立会い』をしたい場面も違います。
また、仕事や里帰りの関係で、
希望通りの『立会い』のタイミングに居合わせられないこともあります。

しかしどの『立会い』も「見学分娩」になってはいけません。
どのタイミングから奥さんの側につくことになっても、
『立会い』での夫の役割は多くあるのです。


『立会い』の現場での夫の役割

産痛緩和マッサージ

陣痛の痛みはマッサージにより緩和されます。
緩和を図れると、お母さんはうまく呼吸ができ、
より安全でスムーズなお産につながります。
ご主人にもできる、産痛緩和法は
以下に詳しく説明しています。
簡単なので、陣痛が来る前にお互いの体を使い
マッサージの場所や方法を確認しておくとよいでしょう。
ご主人必見!誰でもできる「陣痛の痛みを和らげる」方法

水分補給、栄養補給

お産中のお母さんは体力勝負です。
いよいよ陣痛がきつくなってくると起き上がれず、
水分や栄養を摂るのも一苦労です。
その時、ご主人は陣痛の合間をみて、
奥さんに水分や栄養が必要か聞いてあげて下さい。
そして、必要であればそれを介助して下さい。

お産が長時間になってくると、
お母さんは声を出して指示するのもきつくなってきます。
旦那さんが質問をし、奥さんの首の動きで意思を汲み取ってあげましょう。

水分補給の介助時には
ペットボトルにすぐ装着できる
蓋つきのストローを用意しておくと便利でしょう。
しかし、外国製の水のペットボトルは
蓋の規格が合わずこぼす原因になるので注意してください。

栄養補給の介助時には
ゼリー飲料や栄養補助食品、
おにぎりやサンドウィッチといったもの用意すると便利です。
介助がしやすくお母さんも食べやすい形状になります。

うちわで扇ぐ、汗を拭く

お産中のお母さんは、季節を問わず大量の汗をかきます。
しかし、だんだんと自分で汗を拭うこともきつくなってしまいます。
また、分娩が近づいてくると
産まれたての赤ちゃんが冷えないように、
分娩室内ぼ室温を高くします。
そのため、お母さんはさらに汗をかくことになります。

汗をかいてきたら、汗を拭いてあげましょう。
また、陣痛と陣痛の間の時間(間欠期)に
うちわで扇いであげるといいでしょう。
出産施設にはうちわがあることがほどんどですが、
自宅からうちわを一つ持っていくのをオススメします。
また、扇子よりもうちわの方が扇ぎ易く疲れにくいです。

さらに、全身に汗をかいてきたら、
奥さんが掛けているタオルケットを
空気を取り込むよう上下に動かし、空気を送ってあげましょう。
中の蒸れが解消され心地よく感じます。

手を握る、奥さんと赤ちゃんを励ます

お産中にご主人が手を握る行為は、
奥さんに安心感を与え、よい陣痛を引き起こします。
詳しくは
「妊娠・出産・育児」が「楽に」なる鍵は『夫婦力』にあり!【後編】】へ

奥さんと一緒に呼吸をしたり、
現状を誉めたり励ましたりすることもよいでしょう。
またお腹の赤ちゃんを励ます声かけをすることもとても大事です。
たまに、力が入りつい興奮して
声が大きくなってしまうご主人もいますが、
優しく労うよう声かけをしてください。

出産時の写真などの記憶を残す

出産は感動と喜びに満ちた瞬間です。
この瞬間を記録に残したいというご夫婦も増えてきています。
出産施設に写真撮影・動画撮影が可能かあらかじめ確認をし、
どのシーンを記録に残すか
事前にふたりで話しておきましょう。

撮っておけばよかったとよく後悔されているのが、
出産直後の夫婦と赤ちゃん(子供たち)との家族写真です。
ご主人がスタッフに頼んで撮ってもらうといいでしょう。

その他

その他にも
いつも家で聞いてる(リラックスできる)音楽を流す
付き添いの子どもたちと一緒に応援する
連絡全般をご主人が行う
足りない物を買い出しに行く など
そのご家族特有のサポートの仕方があります。

『立会い』時の夫の心構え

『立会い』では、ご主人は奥さんの頭側にいてもらいます。
その方が最後まで手をつないで支えることができ、
その他の介助もできるからです。

『立会い』といえば
赤ちゃんが出てくる側(お母さんの陰部側)で
ご主人が見ているのを想像される方がいますが、
現実にはその部分には分娩介助者(医師や助産師)がおり、
清潔を保たないといけない部分のため
ご主人は立ち入ることはできません。

この『立会い』の際中、
まれではありますがお産中に倒れるご主人がいます。
血をみてというよりも、お産の雰囲気に緊張して
倒れてしまうようです。

ご主人が倒れてしまうと、
ご想像の通りスタッフ側の手が必要になり大変になります…

『立会い』をするご主人には
しっかり栄養と水分を摂って臨んでください。
奥さんが食べれないと遠慮して一緒に食べない方がいますが、
その結果うまく介助ができず『立会い』には逆効果です。
できれば睡眠もとれたらいいのですが、
長時間付き添ってなかなか眠れない場合もあるかもしれません。
その時はせめて水分と栄養を摂りながら
『立会い』をして頂きたいです。

『立会い』時に夫が絶対してはいけないこと

『立会い』時に、ゲームを持参されたり
携帯で動画をみたりやゲームをしているご主人をたまに見かけます。
マッサージをしながら動画を脇でみたり、
マッサージもせず、さすりもすることなく携帯ゲームしていたり。

覚えておいて頂きたいのは
そのことを出産後も、出産してからも奥さんは
「ずっと覚えている」
ということです。
陣痛時はきつくてご主人に当たる方もいますが、
逆にきつくて口に出せず、
(自分がきついのにゲームをしていた)
という思いを強く残してしまう方もいます。
これは、昨今話題になっている
産後クライシス( 出産後(0~2年)に、急激に夫婦仲が悪化する現象 )
を引き起こす理由の一つにあげられます。
詳しくは
子どもが0歳~2歳での離婚率が高い!仲良し夫婦でも危険な『産後クライシス』とその対処法】へ

無痛分娩だから、
マッサージは今は必要ないといわれたから、など
ご主人にも理由はあるかもしれません。
しかし、
無痛分娩でもなんでも、お産は決して楽ではありません。
一緒に呼吸法をしたり、そのほかの介助をしてあげて下さい。

さいごに

ほとんどのご夫婦が『立会い出産(分娩)』をしてみて
「よかった」と感じています。
それは、「我が子が生まれる」というのが
どれだけ貴い瞬間であるか、素晴らしい感動に満ちた瞬間であるかを
身をもって実感するからです。 
『立会い』におけるご主人の役割は多くあります。
それらは、
奥さんと赤ちゃんを支え、出産の力になるのです。

「出産」は女性のものではなく、
家族みんなで乗り越えるものです。
ご主人は出産した後に、
いっぱい奥さんと我が子を誉めてあげて下さいね。