【助産師監修】正しく知ろう「出生前診断」
- 2022.04.14
- 更新日:2024.04.12
- 楽しい妊娠
- 35歳以上, 40歳以上, OVER35, いつまで, デメリット, メリット, リスク, 中絶, 人工中絶, 出生前診断, 出産, 外国, 妊娠, 最高のお産, 染色体異常, 着床前診断, 確率, 育児, 費用, 赤ちゃん, 高齢出産, 高齢初産, 高齢妊娠, 高齢経産
この仕事をしていると
高齢妊娠をされた方から
「出生前診断」についての質問をよく受けます。
またOVER35で妊活をする方からは
妊娠前の「着床前診断」についてもよく聞かれます。
どちらも最近では耳馴染みがでてきた言葉ですが
倫理的・道徳的なナイーブな話題であるのも事実。
今回は「出生前診断」について
詳しくお伝えします。
正しい知識を得ることは
今後の妊娠期の過ごし方・選択をするにあたり
とても重要です。
OVER35で妊娠したからこそ「出生前診断」を
正しく理解していきましょう。
「出生前診断」について
出生前診断とは
赤ちゃんがおなかの中にいる間(胎児の時)に
赤ちゃんの奇形の有無や染色体異常などを調べ
総合的に診断するものです。
しかしこの検査を受けたからといって
必ず全ての異常や疾患が分かるわけではありません。
以前と比べ
出生前診断で分かる異常の数は増えてはいます。
しかし、分かるのは氷山の一角にすぎません。
出生前診断の目的
出生前診断の本来の目的は
母子の健康のために
「最適な治療や管理を行う」ことです。
出生前診断を行うことにより
以下のことができるようになります。
・胎児の現在の状態(異常の有無や程度)の把握
・分娩までの最適な管理や治療を行うことができる
・母子に最適な分娩方法や時期を考える事ができる
・出生直後から赤ちゃんに最適な治療ができる
しかし
「先天性の異常」を発見することが
目的になっている人が多いのも事実です。
特に日本は
人工妊娠中絶ができる国です。
この検査を受けて人工中絶を行う方は
少なからずいらっしゃいます。
この出生診断の結果で人工妊娠中絶を行うというのは
国によっても全く違います。
欧米では
どんな理由でも
人工中絶は禁止としているところもあれば
国家負担で全ての妊婦さんに出生前検査を行い
異常があれば人工中絶を合法としている
ところもあります。
「出生前診断」の検査方法とは
検査の方法はさまざまですが
一般的なものは超音波検査(エコー)です。
毎回の妊婦健診でのエコーも
広い意味で出生前診断の検査を行っていると
考えていいでしょう。
その他に、血液検査や羊水検査などがあり
「非確定的検査」と「確定的検査」に分けられます。
非確定的検査
この検査は「陽性」「陰性」という形で
結果がでます。
その意味とは
「陽性」の場合は、異常などの確率が高い
「陰性」の場合は、異常などの確率が低い
このことから分かるように
非確定的検査の結果は
あくまで確率であり
確定診断をするためのものではありません。
【非確定的検査とよばれるもの】
・母体血清マーカー検査
(トリプルテスト、クワトロテスト)
・非侵襲的母体血胎児染色体検査(NIPT)
・胎児遺伝学的超音波検査
「陰性」の場合はどの検査も信頼性が高いですが
「陽性」の場合は実際異常である確率(下記)が違います。
母体血清マーカー:2~4%
NIPT:90%以上
NIPTは「新型出生前診断」ともいわれており
精度が高い検査になります。
そのため費用にも差があります。
血清マーカー検査:2~3万ほど
NIPT:1回20万円ほど
確定的検査
非確定検査で陽性であったり
他の理由から異常の可能性が高いと考えられる場合
確定的検査を行います。
そしてこの検査では
染色体の数や構造異常の有無が確実に分かります。
【確定的検査とよばれるもの】
・羊水検査
・絨毛検査
これらの検査は
侵襲性(母子に負担のかかる医療行為)があるため
少なからず
流産などを引き起こす可能性があります。
「出生前診断」は受けた方がいいの?
結論からいうと
出生前診断を受けるという判断は
ご夫婦の考えや価値観で違ってきます。
しかし以下状況があてはまる場合は
染色体異常のお子さんが生まれる可能性があります。
・35歳以上の出産(高齢出産)
・カップルのどちらか、また両方に染色体異常がある
・染色体異常を持つ家族がいる
・先天異常児の出産または死産の経験
・過去の流産が何度かある
以上があてはまるご夫婦では
出生前診断を考える方も多くなってきました。
また、日本ではあまり積極的ではありませんが
医師から検査をすすめられるケースもあります。
また医学的に必要な場合もあります。
先ほども述べた
母子のために最適な治療や管理を行うためです。
例えば
無脳症・水頭症・二分脊椎など
しかし医師が必ず受けるよう強く勧めない限り
「出生前診断」はご夫婦が判断をする必要があります。
出生前診断に興味をもったのであれば
「出生前検査を受けるのか」
「なぜ受けるのか」
「もし異常があった場合はどうするか」など
ご夫婦ふたりでしっかり話しをしましょう。
関連記事
【どういうのがあるの?高齢出産でみられる6つのリスク】
さいごに
出生前診断を受ける人は年々多くなっています。
とはいえ日本は先進国の中ではまだまだ少ないのが現状です。
しかし
女性の社会進出、晩婚化により
OVER35で出産する方は
以前より多くなってきています。
OVER35の方が
少しでも安心して妊娠期を過ごし
出産を迎えるためにも
「出生前診断」はひとつの選択肢として
必要なのかなと感じています。
ご夫婦やその家族
生まれてくる赤ちゃんのために
「何が幸せか」「何ができるか」
それはそのご家族の置かれている状況や環境
そして価値観で全く違います。
もし出生前診断が気になるのであれば
かかりつけの医師に相談をしてみましょう。
また出生前診断を行う専門のクリニックもあります。
頭でぐるぐる悩んでいるのであれば
まずは相談だけでもされてみてくださいね。
参考文献
著:大竹 明 他(2020)『妊娠したら読んでおきたい出生前診断の本』ライフサイエンス出版
-
前の記事
「分娩介助ってこわくないの?」助産師になって何度も聞かれた質問 2021.11.03
-
次の記事
【助産師監修】高齢出産は帝王切開が多い? 2022.04.30
[…] NEW ARTICLE 高齢出産だからこそ!正しく知ろう「出生前診断」 […]