はじめに
赤ちゃんの黄疸(新生児黄疸)は、90%以上の赤ちゃんに見られ、皮膚や白目の部分が黄色く見える症状です。そのほとんどは病的な理由ではなく生理的なものになります。今回はほとんどの赤ちゃんに現れる一般的な黄疸、新生児の生理的黄疸について説明していきます。
新生児の生理的黄疸について
出生後2~3日後から、皮膚や白目の部分が黄色くなり、その黄色さは3~5日目にピークになります。そのため、出産した施設にまだ入院中のときに、その症状が出現する場合が多いです。黄疸が出始めても赤ちゃんは元気なことが多く、皮膚の黄染以外は特に変わった様子はありません。しかし、黄疸症状が進行していき黄疸が悪化すると、核黄疸という脳損傷を招く可能性があります。
黄疸の検査は、ほとんどの出産施設で毎日行われます。毎日行われる検査は簡易的な方法で、赤ちゃんに痛みや苦痛がない検査方法です。その検査で値が高くでた場合は、さらに詳しくは調べるために、赤ちゃんから血液を採取して詳しい黄疸のデータをとります。血液採取は短時間で済みますが、赤ちゃんの手の甲や踵に針を刺し採血するため、赤ちゃんにはちょっと頑張ってもらう検査になります。
赤ちゃんの黄疸が起こる原因とは
赤血球を多く持っているから
前回の【なぜ赤ちゃんは「赤い」のか?】でも説明したように、
赤ちゃんの血液は、酸素を運ぶ赤血球の割合が成人に比べ20%ほど多くなっています。なぜかというと、母親のお腹の中では、赤ちゃんは自力で呼吸できません。そのため、酸素交換は臍の緒を通る血液で行われます。呼吸で行う酸素供給よりも、血液で行う酸素供給は効率が劣ります。そのため充分な酸素を確保するために、胎内の赤ちゃんは多く赤血球を持ち、スムーズに体全体に酸素を供給できるようになっています。しかし、この世に誕生し自分の力で肺呼吸できるようになると、余分な赤血球は不要になります。この不要になった赤血球は処理されますが、赤ちゃんの肝臓が未熟であるなどの理由でその副産物であるビリルビンがうまく体外に排出されず、皮膚に沈着してしまうのです。そのビリルビンの付着が肌を黄色く見せる原因になっています。
母乳性の黄疸
母乳性の黄疸とは、母乳を飲んでいる赤ちゃんに現れる生理的な黄疸のことです。まだしっかりと原因はわかっていませんが、母乳に含まれる成分が、ビリルビンを処理するために重要な酵素の働きを妨げている可能性があると言われています。実際、早くから母乳栄養が確立できているお母さんの赤ちゃんは黄疸が強く出る傾向があります。しかし、母乳性の黄疸は危険性が低く、母乳を中断する必要はありません。
黄疸の治療法
母乳やミルクを過不足ないように与える
黄疸は脱水状況に置かれると症状が強く出てしまいます。そのため、母乳やミルクが足りてないことがないように充分に水分を与えるのが重要です。黄疸の原因になっているビリルビンは尿や便として排出されます。排泄を促すためにも、水分を摂取しビリルビンの代謝を促しましょう。
光線療法
黄疸が強く出始めた赤ちゃんには、特殊な光を当てて治療する「光線療法」という治療を行います。この特殊な光を赤ちゃんの全身に浴びさせると、皮膚に沈着したビリルビンが血液に戻り、最終的には尿や便として排出されるのを促し黄疸を治療するという方法です。
この光をなるべく体全体広い範囲に光を当てるほうが効果的なため、赤ちゃんはオムツだけの姿になります。保育器で照射する場合とコット(病院で使用される赤ちゃん用ベッド)で照射する場合があります。前者は体の上から光を照射し、目の網膜を守るためアイマスクをします。後者は光が外に漏れないように、コットに張り付いた専用の服に体を固定し、背中から光を照射します。1回の治療は24時間が基本です。そのため、保育器での治療が開始になると、母児異室を余儀なくされます。
さいごに
現在の日本の新生児医療は世界的にも高水準です。そのため新生児の生理的黄疸の治療を開始する基準も厳しくなっており、安全な範囲から治療を開始するのがほとんどです。そのため、入院先で、自分のお子さんが一般的な黄疸であると言われても心配しないでください。また治療方針等で分らないことがあれば、その都度、担当の医師や助産師に聞き不安を少なくしましょう。
新生児の生理的黄疸は病気ではありません。しかし、このような変化があることを知っておくと変化にも慌てずにいれますよ。