【助産師監修】夫婦の危機「産後クライシス」とは?対処法も解説

夫婦力

離婚危機を引き起こす「産後クライシス」とは

子どもが0〜2歳までに離婚する夫婦が多いことをご存知ですか?
全体の離婚率の中でもこの時期の離婚率は圧倒的に多いのです。
このことは最近の傾向ではなく
すでに長年のデータから言われていることでした。
しかし、最近になってこの離婚の原因・現象に名前が付けられました。
それが『産後クライシス』です。

最近よく耳にすることも多くなってきた『産後クライシス』。
これは2012年にNHKの番組で紹介されたのがきっかけでした。

産後クライシスとは…
出産後(0~2年)に、急激に夫婦仲が悪化する現象 のこと

出産後に起きる環境やホルモン変化により起こる
「奥さんの変化」と「旦那さんの変化」が相互に関係し
それを引き起こすと言われています。
特に女性の、男性に対する愛情の低下が問題になっており
「この時期に低下してしまった旦那さんへの愛情は、元に戻ることはほぼない」
という結果が出ています。

また、離婚にまでは至らなくても、
この時期生じた愛情の低下は、結婚期間中ずっと持続します。
そのため、昨今多くなってきた熟年離婚も
この「妊娠・出産・育児」(バースライフ)の時期に起こった
愛情の低下が発端になっていることが多いことも分ってきました。

環境の変化が引き起こす夫婦仲

出産後は環境が一変します。

女性は「妊娠・出産・育児」(バースライフ)を経て
劇的なホルモンの増減を経験します。

ホルモンのおかげで、妊娠ができ赤ちゃんをお腹の中で育てることができます。
ホルモンのおかげで、陣痛がおこりその痛みも乗り越えられます。
ホルモンのおかげで母親となり子どもを守る本能が備わります。

不慣れな育児、完全ではない体調で、心も体も弱っていきます。
その上ホルモンの大きな波にさらされているこの時期は、
奥さんの心身のバランスも崩れやすくなるのが当たり前なのです。

また、出産後の母親は子どもを守る本能として攻撃的になります。
その対象は旦那さんや家族にもむきます。

例えば…
抱っこの仕方一つにしても怒りやすくなります。
今までは大丈夫だった旦那さんのふとした言葉や態度でも
イライラしたり、傷ついたりします。



ホルモンの影響を受けていない旦那さんは、
赤ちゃんがいる生活と、出産後から様子が違う奥さんの変化に
大変戸惑います。
そして旦那さんも余裕がなくなってしまうのです…

男性はどうしても「家事と育児=女性が主体」
と思ってしまう方が大半です。
そのため育児や家事を「手伝う」といった言葉は
この時期の奥さんを大変イライラさせてしまいます。
「手伝う」のではなく「当たり前のように行う」ことが大事なのです。

「イクメン」という言葉も「家事と育児=女性が主体」
であるからこそできた、日本独特の言葉なのです。

*詳しくは
「妊娠・出産・育児」が「楽に」なる鍵は『夫婦力』にあり!【前編】】へ

奥さんと旦那さんが、
互いの変化に感化されすぎてしまうと
夫婦仲に悪影響を及ぼします。

そうなってしまうと

奥さんは、産後うつを引き起こす可能性が高くなります。
産後うつまでにはならなくても、
常にピリピリした状態になるかもしれません。

旦那さんは、家庭に興味をなくしてしまう方もいらっしゃいます。
そうなると自然に外に目を向けてしまいます。

夫婦仲が急に冷めてしまう「産後クライシス」は
ふとした事の連続で簡単に引き起り
取返しのつかない状況を生み出してしまいます。

「産後クライシス」の対処法

この夫婦の危機を引き越す「産後クライシス」を防ぐには
まず、このような危機を誰もが直面するものであると、
【夫婦で認識】することです。

出産前からこの情報を夫婦でお互い共有し、
話し合いをすることが大変効果的です。
また出産後であっても早くこの事実を夫婦で共有することです。

その上で、以下の対処法が身につきます。


奥さんは

ホルモンのせいで
イライラしたり普段とは違う自分を自覚します。
そのため旦那さんに対する自分自身の態度を
第三者目線で見ることができるようになります。
また、普段と違う言動をした後も
旦那さんへフォローの言葉を言えることができます。

逆に、「産後クライシス」があることを知らないままでいると、
言動が普段と違うことを認識できず
旦那さんへのフォローをすることができなくなります。
旦那さんは奥さんの変わった言動を受けることにより、
奥さんへの言動も配慮を欠いてしまうものになってしまうかもしれません。


旦那さんは

産後奥さんの言動が変わったとしても、
それが産後に起こるホルモンの影響であることを理解できます。
そのため、奥さんが故意ではなく不可効力で
今までと違う言動を起していることに理解を示します。
奥さんの言動に感化され
配慮を欠いた言葉掛けになってしまうのも防ぐことができます。
また、家事や育児を「手伝う」のではなく
「主体的に取り組む」ことが自然にできるようになります。

赤ちゃんが泣いていたら…
「おっぱいじゃない?」と言う前に
すすんで抱っこしてあやしてあげましょう。

赤ちゃんのオムツが汚れていたら
「よごれているよ。」と言う前に
率先してオムツを交換しましょう。

茶わんや洗濯ものが溜まっているのをみたら
「無理して洗わなくていいよ」と言うのではなく
洗ってあげましょう。

旦那さんに神様仏様になれとはいいません。
でもこの時期の奥さんを支えてあげられるのは
旦那さんの力がとても大きいのです。

さいごに

「仲のよい夫婦」と感じているご夫婦でさえ、
「産後クライシス」による夫婦仲の破たんが起こります。
「仲がいい」ことを自負していると、
産後に起こるお互いの変化に上手く対応できなかったりします。

出産前に夫婦仲を自慢していたご夫婦が、産後に離婚をしていたり、
以前の妊娠ではあんなに夫婦仲がよかったのに、
今回は違う相手の子を出産する方等…
産後に夫婦仲が激変したご夫婦を多く見てきました。

どのご夫婦も、産後も今と変わらない仲が続くと思ってしまいがちです。
産後の「環境の変化」については話しはするものの、
「互いの変化」について深く考える機会が少ないように感じます。

うまく対処できた夫婦は
この時期を機にさらに夫婦仲がよくなり
お互いを今以上に思いやれることができます。
例え産後に夫婦で揉めることがあっても、
この時期を一緒に乗り越えることで「夫婦力」は強固なものになり、
「家族力」も発展していくのです。


現実に起こる、夫婦を取り巻く産後の変化は
思っているよりも劇的です。

「産後の変化」や「産後クライシス」について
もっと夫婦で話してみましょう。

そしていついかなる時も
お互いに感謝の「気持ち」と「声かけ」と「態度」を忘れず
夫婦でこの貴重な時間であるバースライフを
「楽に」「楽しく」過ごして頂きたいと思います。 



「産後クライシス」についてより深く知りたい方は
合わせてこの記事も読んでくださいね。
「妊娠・出産・育児」が「楽に」なる鍵は『夫婦力』にあり!【前編】
「妊娠・出産・育児」が「楽に」なる鍵は『夫婦力』にあり!【後編】